PCで使われているフロッピーディスクの代替として発売を開始したCD-Rでしたが、ハードウェアの対応も必要であり、当初は大きな需要がすぐに来るとは思われていませんでした。
ところが、ある時点から一部の市場で異常な数のディスクが売れていることが判明。理由を調べてみると、PC用ではなく、音楽用ディスクとして使用されていることが分かってきました。
当時は、カセットテープ→MDとオーディオのデジタル化が進むと予想されていましたし、日本市場もそのような動きだったのですが、日本以外ではカセットからCD-Rへの直接的なシフトが明確になってきたのです。
そしてCD-Rのコンシューマ化/コモディティ化が進む中で、パッケージの印刷ラッピングフィルム化や、複数パック化、ディスクのカラー化などと共に、収納ケース入りなど、様々な商品形態が提案されて行きました。
写真右は、欧州初の印刷ラッピングフィルムで巻かれたCD-R。欧州オリジナルデザインのパッケージは、太陽のコロナをモチーフとし、まるで日食で太陽が月に隠れる時にコロナが大きく輝くがごとく、アナログメディアの終焉ともに新しいデジタル時代が輝きを増すという暗喩が込められていました。高価な金に代わる銀反射幕は反射率に優れ、REFLEXのブランドがアピールされました。
写真上は、iStorage という収納ケース入りの商品です。上部が広く、スタイリッシュなケースは使い勝手も非常に良く、インテリアにもなじみます。一方で、異形のケースであるために、印刷シュリンクフィルムの位置合わせなど製造の負荷が大きかったことは反省点なのですが、英国にある日系の印刷フィルム工場のスタッフも新しいテーマにしっかりと取り組んでくれて、「日本の工場より仕上がりがいいですね。」と伝えた時にとても喜んでくれたことを思い出します。
● CD-R i-Storage Box:
・アートディレクション:井澤 正(TDK Recording Media Europe)
・実施デザイン:Servaes Spiekerman(Dekker & Spiekerman design/オランダ)1999年ごろ
● CD-R74EC :
・アートディレクション、基本デザイン:井澤 正(TDK Recording Media Europe)
・実施デザイン:高橋 敏(IFF COMPANY)1997年ごろ