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MD FINE

2000年頃、日本市場での音楽録音は確実にカセットテープからMDへと移行していました。MDは小さなカートリッジに入ったコンパクト性と、ディスクメディアならではの頭出し性(好きなところから聞ける)、録音・消去が何度でもできる音楽専用メディアとしての使い勝手の良さが魅力でした。一方でメディアや機器の価格が高く、海外ではほとんど普及しなかった、今で言うところの「ガラパゴス」なメディアだったと言えます。

第2世代のFINEは、おしゃれでシンプル、スタイリッシュなMDとして、MDとしてははじめて、人物をパッケージに配したデザインで登場しました。ラッピングを担当していただいたのは、化粧品のデザインなどでも有名なヘルベチカの有澤さん。ご当人もとってもオシャレなおじさまなのですが、ファッション雑誌の表紙のように、当時の常識を覆すような素敵なデザインをして頂きました。

アッパーとボトムの色を違え、見る角度や明るさ、ディスクの反射などによって変化するカクテルカラーシェル。ヴィヴィッドな色だけでなく、ブラウンやクリアなど微妙な色もラインナップするなど、従来とは一線を画したファッショナブルなアイテムとしてシェルにもこだわりました。


美しいモデルさんのモノトーンの写真の左下には、それぞれのカラーや雰囲気に合わせた、ワーズワースの詩が付されています。たぶん誰も気づかないだろうと入れた「隠れこだわり」な部分ですが、未だに誰からも話題にして頂いたことはなく、ちょっと残念。

人物パッケージはその後、日本の若者の笑顔の写真を集めた「金のMD・銀のMD」、そして、子どもと家族がテーマのインクジェットペーパーFINEにも引き継がれ、店頭で競合品とはちょっと違ったひとコマを演じてくれました。

<写真は、当時の撮影風景とTDK歴史館での展示品。>


WORKS

● MD FINE:
・アートディレクション:井澤 正(TDK)
・実施デザイン:高橋 敏(IFF COMPANY)、有澤 眞太郞(ヘルベチカ) 2001年